2013年10月25日金曜日
【第四回】茂庭・摺上川ダムの猿たち
伊達市(旧伊達町)と福島市(瀬上)の境には摺上川が流れ、阿武隈川と合流する。
この川では夏によく水遊びをしたものだった…。
子どもの頃の私は一時期、鮎の虜となっていた。
あの清流の魚の鮎である。
摺上川には、初夏に放流される養殖鮎と、阿武隈川から遡上する天然鮎がいて、鮎釣り解禁日が過ぎると、流れの淵で竿を上下させる釣り人たちの姿が目立つ。
私は釣りもしたがあまり釣れた記憶はなく、川に潜り、鮎をヤスで突いて捕らえることが多かった。
分厚い唇に丸い目、胸びれの上に黄色い斑点が浮かび、身を捩りながら流れに漂っている。
姿はどこかユーモラスだけれど、水中眼鏡越しに見る鮎が私にはとても美しく思え、見取れるあまりに突くきっかけを失う時もあったほどだ。
梁漁という鮎を無傷で捕らえる方法があるのを知り、密かに家の簾を持ち出して摺上川の瀬に石を積み、水流の落ち込みをこしらえて、そこに簾を仕掛けたこともあった。
数日間、早朝の見回りに出かけていたが、残念ながら鮎を捕らえることはできなかった。
そしてある日、雨による増水で簾の仕掛けは無くなり、やがて母の知るところとなる…。
また授業中、ノートの端によく鮎を描いていたので、今でもすらすらと描ける。
図工の時間に彫刻刀で鮎の彫り物も作った。
何故、鮎に恋い焦がれていたのか、今思うと不思議でならない。
伊達より摺上川の流れを遡ると、飯坂温泉街。
渓谷に沿って温泉ホテルが並び立つ。
飯坂温泉オフィシャルページ
http://www.iizaka.com/
摺上川に沿って走る国道399号線をさらに上流に行くと、滝野、茂庭の集落に行き着く。
この辺りへは、よく友人たちと自転車で登って行った。
途中のどこかに滝壺があり、度胸試しで淵に飛び込むこともあった…。
ある時、友人たちと河原で休んでいたら、突然対岸の崖上から何かの塊が転がり落た。
塊は水面に達するまでに解れて、三本のロープとなった。
それを伝わって滑るように降りてきたのは、三人の自衛隊員たちだ。
着水して岸にたどり着くと、休憩時間になったのか、全員が服を脱いで全裸で水浴を始めた。
そして汗を流した後、彼らは再び服を着て森の中に消えて行った。
私たちは軽く会釈をする以外、ただ無言で眺めているだけだった。
周辺の山々では、亡き祖母とわらび採りや、きのこ狩りをした記憶も蘇る。
…待て。
この話だけで、別のエントリが出来そうだ。
今回も冬の風光である。
前エントリで阿武隈川のオオハクチョウと接した後、茂庭の方まで足を伸ばした。
2007年1月26日。
鬱蒼と自然林が茂っているイメージだったが、山の形が変わってしまった。
わらび採りの記憶と、もはや交わらない景色といってよい。
整備された山肌…。
斜面を岩が転がるように見えたのは、猿の群れだった。
十匹ほどいただろうか。
ボス猿らしい…。
近づくと牙を剥きだして、威嚇する。
同じ日に、オオハクチョウと猿たちを見たことになった。
奥茂庭と呼ばれた、梨平、名号の集落は、現在は摺上川ダムの底にある。
摺上川ダム管理所
http://www.thr.mlit.go.jp/surikami/
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